温泉・銭湯・サウナ

鳥居清長作「女湯」

【温泉の歴史】江戸時代は病気の療養や健康回復(湯治)が目的だった!

喧騒から逃れた温泉地で、少し熱めのお湯に浸かり、ゆっくりと体を安らげる。誰もが「明日から頑張ろう」と思える瞬間です。今では、一泊や二泊の短期間や、日帰りなどでも温泉を利用する機会は多いです。東京や大阪のような大都市でも、SPAなどで気軽に温泉を利用することも可能です。現代の人々にとって、温泉は気軽なレジャーのひとつと言って良いでしょう。

そもそも温泉は、一般庶民が気軽に利用できるものではありませんでした。今回は、江戸時代における「温泉」のルーツを探っていきます。

温泉は庶民のあこがれ

温泉

江戸時代、温泉は庶民のレジャーではありませんでした。

そもそも江戸時代は、庶民が簡単に旅に出かけることが許されていなかったのです。旅に出るには、地域の道中奉行に通行手形を発行してもらう必要がありました。通行手形の発行には目的が必要です。商売のため、もしくは富士山に行く、伊勢神宮に行くというような目的がないと、庶民に通行手形が発行されることはありませんでした。

そのため、気軽に温泉旅行に行くなんてことはできなかったのです。では、どうすれば庶民が温泉に行くことが許されたのでしょう?それは、病気療養のため、温泉に行くという目的が必要だったのです。

病気療養の目的に温泉に行くことを「湯治」と言います。湯治は、温泉がある地域に一定期間滞在し、病気の療養や健康の回復を行います。期間は一廻り(7日間)を単位とし、少なくとも三廻り以上の期間が必要とされていたようです。

温泉への浸かり方もさまざまで、一般的には男女が浴室をともにする混浴でしたが、幕湯や留湯という浸かり方もありました。幕湯は自分が温泉にはいるときは他の人を入れないという、いわば貸し切り個室の温泉のことで、浴室の入り口に幕をかけて、他の人が入らないようにしていました。留湯は幕湯をさらに発展させたもので、湯治滞在中は温泉宿を借り切るという方法です。さすがにこれは、大名や豪商のようなお金に余裕のある人々が利用していたようです。

旅籠(はたご)と温泉宿は違う?

さて、江戸時代の旅というと、1日に約40キロほど歩き、関所の周辺に置かれた旅籠(はたご)という宿に泊まるのが一般的でした。有名なのは『東海道中膝栗毛』でしょう。主人公弥次郎兵衛と喜多八の珍道中を巻き起こす物語は人気を博し、今で言うベストセラーとなりました。

旅人が泊まるホテルは、旅籠といい、湯治目的の温泉宿とは分けて考えられていました。旅籠は旅人が宿泊する場所で、あくまで夜露を凌ぎ、次の日に備えて体を休める場所なのに対し、温泉宿は湯治を目的とする場所でした。今でこそ日帰りや、一泊二日の温泉宿も少なくありませんが、湯治は一定期間以上に渡って滞在することが定められていたのです。

温泉のお湯はとても価値のあるものでした。とくに病気の療法効果のある湯は貴重で、大きな湯おけにお湯を入れ、将軍様に献上されるほど大切にされていたのです。もちろん、そういった評判は庶民にも知られ、有名な温泉地のお湯は、皆のあこがれの的でした。

一夜湯治事件とは?

江戸時代も半ばに差し掛かったころ、すっかり平和になった江戸の町で「一夜湯治事件」が起こります。これは、本来湯治が目的であった箱根の温泉地が、東海道を往来する旅人を誘り、「一夜湯治」と称して温泉の利用を許していたのです。それまで湯治という目的がないと入れなかった温泉ですが、目的がなくとも気軽に入れるとあって大変な評判を呼びました。最初こそ旅人の間だけで流行っていましたが、徐々に「一夜湯治」を目的に、箱根に人が集まるようになったのです。

これに困ったのが近隣の宿場町でした。なにせ、旅人を箱根に取られ、自分の町に泊まる宿泊者が激減してしまったのです。これに起こった宿場町が、道中奉行に訴え出るという騒ぎに発展したそうです。皮肉なことに、この事件で「一夜湯治」は知られるようになり、温泉地に宿泊する人が増えていきました。旅人だけではなく、参勤交代中の諸大名までも温泉地に宿泊していたと言われています。

人を癒やす温泉

昔から温泉には「人を癒す」という効果がありました。東北地方や北関東などでは、今でも湯治場としての施設を備えた温泉宿は多く残されたいます。そして、これらの温泉を利用したリハビリ施設や治療所、温泉病院などは各地に沢山残されています。しかし現代の湯治は、温泉の効能により、体を癒す目的もありますが、多くは心を休めることに大切にしているようです。

もし温泉に行かれたのなら、そこに書かれている泉質表を見てください。温泉の成分には効能が記載されているはずです。もしあなたが何らかの悩みや病気を抱えているのなら、それらを解消する効果のある温泉を探してみてもいいでしょう。もちろん、万能というわけではありませんが、なんらかの効果があると思います。このように自分に合った温泉を探してみるのもいいでしょう。先に述べたとおり、江戸時代は気軽に温泉を利用できませんでした。温泉を利用することは、現代人に許されたレジャーなのです。

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PROFILE

シュワちゃん
シュワちゃん炭酸入浴剤のセカイ 編集長
不動産販売・管理・経営を経て、某コンサルティング会社役員。現在30歳。日々の業務に忙殺され、自分を見失いかけていた頃に炭酸入浴剤「ホットタブ」と出会う。入浴、睡眠、体調管理の重要性を知り、炭酸入浴剤のセカイへ。保有資格:入浴検定、宅地建物取引士、管理業務主任者
ベストオブ入浴剤:薬用ホットタブ重炭酸湯

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