ヨーロッパでは医療目的で使用されている炭酸泉は、日本人にもすっかり浸透して銭湯や自宅(炭酸入浴剤)で気軽に入ることができます。
「炭酸泉」とは、お湯の中に二酸化炭素のガスが溶け込んでいるお風呂のこと。お湯に浸かると身体に炭酸ガスの小さな気泡が付着し、血の巡りを良くしてじんわりと内側から温まる温泉です。
健康や美容に効果抜群でスーパー銭湯でも大人気の炭酸泉ですが、入浴方法を間違えてしまうと実はその効果は期待できません。今回はそんな炭酸泉の効能を促す正しい入り方をご紹介します。
炭酸泉に期待できる効果
炭酸泉には健康面や美容面などあらゆる効果が期待できますが、その背景には血行促進効果があります。
炭酸泉に入ると、肌に二酸化炭素の気泡が付着しますよね。肌に付着した炭酸ガスは皮膚を通過して毛細血管に入ります。すると毛細血管は炭酸ガスを老廃物だと勘違いし、炭酸ガスを洗い流すために血管を拡張させます。この血管を拡張させるはたらきが、NO(一酸化窒素)による血行促進効果です。では、炭酸泉で血行が良くなると具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか?
疲労回復
炭酸泉の代表的な効能といえば、肩こりや腰痛、筋肉痛の解消。血流が良くなると筋肉がほぐれるので、デスクワークや外回りで疲れた身体を温めながら回復させます。筋肉疲労の回復と肉離れ防止の効果があるため、プロのスポーツ選手も炭酸泉を愛用している人が多いのだとか。炭酸泉に浸かることで日々の疲れがリセットされ、スポーツや仕事のパフォーマンス向上につながります。
実際に多くのアスリートが、疲労回復を目的に炭酸泉に浸かっています。例えば、MLBで活躍するダルビッシュ有選手や、前田健太選手も、炭酸入浴剤を好んで使用しています。
リラックス効果
炭酸泉は別名「心臓の湯」と言われていて、入浴することでリラックス効果を期待できます。
炭酸泉に浸かると血流量が増加し、血圧と心拍数が下がります。すると心臓への負担が軽減され、身体がリラックスできる状態になるのです。スーパー銭湯にある炭酸泉の多くは38℃前後の通常の温泉よりぬるめの温度になっていますが、このお湯のぬるさもリラックス効果をもたらすカギ。
ぬるめのお湯が体の負担を軽減させて副交感神経を高めてくれるので、精神的な落ち着きをもたらします。逆に42℃を超える温度の場合、交感神経が優位となりリラックス効果は得られず、むしろ興奮状態になってしまいます。
冷え性改善
炭酸泉に入ると身体がポカポカするのは、血管が広がって血の巡りが良くなるためです。ぬるめの温度でも十分に温まることができるのはこのためです。血の巡りが良くなることで、冷え性の改善が期待できます。
冷え性の原因の一つとして自律神経の低下が挙げられますが、炭酸泉への入浴は自律神経を整えるためにも効果抜群。温熱感覚が研ぎ澄まされるだけでなく、身体を心から温めるので湯上り後も手足がポカポカする感覚が持続します。
美肌効果
炭酸泉のPH値(水素イオン濃度)は4.5〜5程度で、人の肌に限りなく近い弱酸性。炭酸ガスがシュワシュワする感覚は刺激が強いのではと思ってしまいますが、炭酸泉は肌触りが良くて美肌効果をもたらす温泉としても人気が高いです。
血行促進によって酸素を吸収した細胞は、新陳代謝を活性化させて肌に溜まった老廃物や色素を排出。これによってシミやニキビの改善が期待できます。また、新陳代謝が活発になるとヒアルロン酸などのバリア成分が分泌されて、肌がなめらかになるんです。
有名人、モデルなどの愛用者も多く、炭酸入浴剤のパイオニアで”重炭酸湯”という言葉を世に広めた「ホットタブ」については、田中みな実さんも使用しています。
間違えてしまいがちな炭酸泉の入浴方法
温泉はもちろん入浴剤としても親しまれている炭酸泉。
健康や美肌に嬉しい効果があって人気の温泉ですが、入浴方法を間違えてしまうとせっかくの効能が台無しになってしまいます。多くの人が間違えて認識している、炭酸泉に入浴する際の注意点を見ていきましょう。
炭酸泉に入浴する時間は長ければ長いほど良い?
銭湯に行くと、炭酸泉にずっと浸かっている方をよく見かけます。炭酸泉はぬるめの温度に設定されているので、長時間使ってものぼせにくい温泉です。
「長く浸かれば浸かるほど健康や美容の効果が期待できるのではないか」と思って長湯をする方もいるかもしれませんが、銭湯の炭酸泉の場合、塩素濃度も高めであるため30分を超えるような長湯はあまり推奨できません。目安は、15分から30分ほど。代謝が向上する炭酸泉は、皮脂が落ちやすくて30分以上長く浸かっていると肌が乾燥してしまいます。
しかし、大分県竹田市には「長湯温泉」という炭酸泉が湧き出る日本でも珍しい温泉があります。ここについては、実は1時間以上の「長湯」を推奨しています。また、先ほど紹介したホットタブの創業者である、紫綬褒章を受章している小星重治氏も「ホットタブを使った入浴で1時間以上の長湯」を推奨しています。
もちろん、心臓の弱い方やのぼせやすい人は無理をせず、自分のペースで構いませんが、シーンごとに最適な時間を選択するようにしましょう。
炭酸泉で火照った身体はしっかり冷ました方がいい?
炭酸泉に入ると血行が良くなって身体があたたかくなりますが、入浴後には一つ注意すべきことがあります。それは、火照った身体を冷まさないこと。
血行が改善されて体の冷えが改善されたように感じても、入浴後にそのまま裸でいると湯冷めしてしまうので気をつけましょう。血行促進の作用を無駄にしないために、入浴後はすぐに服を着るのがおすすめです。「最高の入浴法(著:早坂信哉)」によると、湯上り後は体を冷やさないよう、すぐに掛け布団にくるまり、すぐに就寝することが推奨されています。
炭酸泉の効果を発揮する正しい入浴方法
入浴する時間やタイミングには注意が必要な炭酸泉。では、炭酸泉の効果を発揮する正しい入浴方法とはどのようなものなのでしょうか。体質改善や美容に効果をもたらす炭酸泉の入浴方法をご紹介します。
入る前に緑茶を飲むとより効果的
身体への負担が少なく普通の温泉よりも長く湯船に使っていられる炭酸泉ですが、入浴中は気づいていなくてもかなりの発汗作用が促されます。そのため、入浴前には十分な水分を取るようにしましょう。
とくにおすすめなのが、炭酸泉に入る前に緑茶を飲むことです。緑茶の中に含まれるカテキンには抗菌化作用があり、血管を若返らせる効果があります。血流がさらによくなるので、炭酸泉に入浴する前は緑茶を飲んで水分補給しましょう。
入浴時間は15分おきがベスト
多くの銭湯では炭酸泉の入浴時間は10分〜15分程度とすすめています。血行促進の効果をより実感したいのであれば、15分おきに入浴するようにしましょう。15分の入浴、15分の休憩を交互に繰り返すと、血の巡りが良くなります。血行が良くなりすぎてめまいを起こしてしまう人もいるので、無理をしない程度に浸かりましょう。入浴して5〜6分経過すれば、血流が増えて身体がポカポカしてきますよ。
自宅で入浴する場合は40℃以下の温度で
入浴剤や家庭用装置を使って自宅で炭酸泉を楽しむ人も多いと思います。自宅で炭酸泉に入浴する場合は、35℃〜39℃の温めの温度設定にしましょう。一般的な銭湯の炭酸泉も温度は38℃くらいなので、銭湯で入る炭酸泉線のぬるさに合わせると良いですね。また炭酸泉に含まれる二酸化炭素のガスは刺激を与えると消えてしまうので、追いだきは避けるようにしましょう。
まとめ
疲労回復や美肌効果をもたらす炭酸泉の正しい入浴方法をご紹介しました。嬉しい効能がたくさんある炭酸泉ですが、うっかり長湯してしまったり入るタイミングを間違えてしまったりすると、かえって体に負担をかけてしまうので注意が必要です。適切な入浴方法を実践し、炭酸泉でストレス知らずの身体とすべすべの美肌を手に入れましょう。
PROFILE

- 炭酸入浴剤のセカイ 編集長
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不動産販売・管理・経営を経て、某コンサルティング会社役員。現在30歳。日々の業務に忙殺され、自分を見失いかけていた頃に炭酸入浴剤「ホットタブ」と出会う。入浴、睡眠、体調管理の重要性を知り、炭酸入浴剤のセカイへ。保有資格:入浴検定、宅地建物取引士、管理業務主任者
ベストオブ入浴剤:薬用ホットタブ重炭酸湯
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